労働者が何らかの理由で職を失った場合に備えて、国が整備した社会保険制度が「雇用保険」です。

雇用保険は、何らかの理由で失業してしまった人の生活を保障するための保険で、一定の条件を満たした労働者は雇用形態に関係なく被保険者となります。

この記事では、パート・アルバイト人材の労務担当者向けに、雇用保険の加入条件・基礎知識について解説します。

パート・アルバイトの雇用保険の加入条件は?

労働者を雇用保険に加入させるためには、一定の加入条件を満たす必要があります。まずは、雇用保険のあらましについて復習しましょう。

雇用保険とは?

雇用保険とは、労働者が仕事を失った際に困らないよう、次の就職先を見つけるまでの生活を支えるための保険です。

具体的には、労働者が失業して所得がなくなった際に、生活を安定させるため、再就職支援を図るため、当座の暮らしを支えることが保険の目的です。

雇用保険は、原則として雇用形態にかかわらず加入しなければならないものなので、パート・アルバイトに対しても加入条件を満たす場合は、加入義務があります。

雇用保険の加入条件

パート・アルバイト人材は、以下の条件を満たす場合に限り、雇用保険に加入できます。

  • 週20時間以上の所定労働時間があること
  • 31日以上の雇用期間が見込めること

よって、週の就業時間が20時間に満たない場合や30日以内の短期勤務者は、雇用保険の加入対象となりません。

また、シフトの都合でたまたま週20時間以上働いた週があったとしても、所定労働時間が20時間未満の場合は、雇用保険の加入対象となりません。

ただし、所定の条件を満たした複数の事業所で働く65歳以上の労働者に関しては、2022年1月〜マルチジョブホルダー制度の施行によって、雇用保険に加入することができるようになりました。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

なお、特殊なケースとして、日雇労働被保険者として日雇いで働く方が雇用保険に加入している可能性があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

雇用保険加入の例外となるアルバイト

所定労働時間・雇用期間の両方の条件を満たしていても、例外的に雇用保険に加入できない人がいます。

また、加入条件を満たしている労働者だとしても、自社で加入手続きをする必要がない場合もあります。

以下、雇用保険加入における例外についてご紹介します。(参照:厚生労働省滋賀労働局「雇用保険被保険者の範囲」)

▲昼間学生
学業が本分である、いわゆる昼間学生がアルバイト・パートに従事している場合、原則として雇用保険には加入できません。

しかし、通信教育・夜間・定時制の学生は、雇用保険の加入条件を満たします。

また、卒業後も同じ職場で継続して勤務する卒業見込みの学生や、休学中の学生についても、雇用保険の加入条件を満たします。

▲ダブルワーカー
2つの事業所で働いている人は、原則として主たる賃金を受ける事業所で雇用保険に加入します。

よって、パート・アルバイトスタッフにとって、自社が主たる賃金を受ける事業所なのかどうかを確認した上で、加入手続きを行う必要があります。

▲長期欠勤者
長期にわたり欠勤し、賃金の支払いを受けていない場合であっても、雇用関係が存続する限りは被保険者となります。

雇用保険の対象となるパート・アルバイトが、保険未加入だった場合は?

パート・アルバイトスタッフの加入義務を知らずに手続きを怠った場合、労働者が不利益をこうむるのはもちろん、会社側にもペナルティがあります。

問題が露見すると、法により罰せられる可能性がありますから、手続きの担当者は十分に注意しましょう。

事業主が加入手続きを行っていなかった場合の罰則

雇用保険は、労働者側が加入手続きを行うタイプの保険ではありません。よって、加入手続きが済んでいなかった場合、それは事業主側の問題です。

雇用保険法第83条1項では、企業側が雇用保険加入の義務に違反していた場合、懲役6ケ月以下もしくは罰金30万円が課せられると記されています。

また、未加入・手続き漏れが発覚した場合、過去2年間にさかのぼって保険料・追徴金が徴収されます

手続きのミスに気付かないまま過ごしていると、いつの間にか問題がどんどん大きくなってしまうため、手続きを担当する際は十分に注意して対応しなければなりません。
(参照:厚生労働省「成立手続きを怠っていた場合は」)

雇用保険の加入対象者への適切な手続きについて知ろう

雇用保険の手続きは、社員の入社時・離職時に行うため、一度手続きを進めてから改めて手続きを振り返る時間は、基本的にほとんどないものと考えてよいでしょう。

それだけに、ミスに気付かず時間が過ぎてしまうことも十分考えられますから、一つひとつの業務の流れを確実に把握しておくことが大切です。

▲新たに雇用保険の対象となる従業員を雇った場合
31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、1週間の所定労働時間が20時間以上のスタッフを雇った場合、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

提出期限は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。例えば、入社した月が8月だったとしたら、翌月である9月10日までに提出する形です。

雇用する人数が多ければ多いほど、手続きが煩雑になりますから、月末・翌月10日前後のスケジュールはしっかり押さえておきましょう。

▲従業員が離職した場合
雇用保険に加入している労働者が離職した場合、以下の2種類の書類を提出する形になります。

  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 離職証明書

雇用保険被保険者資格喪失届は、労働者が退職したことを証明するもので、退職日の翌日から10日以内に公共職業安定所に提出します。

離職証明書は、労働者の退職前の賃金・退職理由などを記入した書類で、こちらも雇用保険被保険者資格喪失届といっしょに公共職業安定所に提出します。

離職証明書の退職理由につき、事業者と離職者で意見が異なる場合は、事実関係が調査されます。

また、書類提出後に交付される「離職票」については、会社から本人に送付しますので、お互いに退職理由について異議のないよう考えを統一することが大切です。

まとめ

パート・アルバイトスタッフは、条件次第で雇用保険の加入条件を満たすため、スタッフそれぞれの就労条件を確認しつつ加入手続きを進めなければなりません。

ミスの放置が、最悪の場合罰則につながることも想定して、丁寧に手続きを進めましょう。

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