パート・アルバイトスタッフとして働く場合、雇用保険に加入するのが一般的です。
しかし、単発バイト・短期アルバイトなど、日雇いも含めて短期間での雇用契約を結ぶ場合、未加入となるケースもあります。
これまで自社で短期雇用の実績がない場合、加入手続きをどうすべきか迷ってしまう人事・労務担当者も多いはずです。
この記事では、単発バイト・短期アルバイトの雇用保険制度について、日雇いのケースと合わせて解説します。
単発バイト・短期アルバイトの雇⽤保険加⼊は必須ではない
先に結論をまとめると、単発バイト・短期アルバイトの雇用保険加入は、必須ではありません。
雇用保険は、一定の基準を満たした労働者のみ加入する保険のため、勤務日数や労働時間によって加入するかどうかが変わってきます。
一般被保険者の雇⽤保険の加⼊条件をおさらい
一般被保険者の雇用保険の加入条件は、以下の通りシンプルです。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる労働者
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である労働者
パート・アルバイトスタッフであっても、上記条件を満たしているなら、一般被保険者の扱いとなります。
ただ、単発バイト・短期アルバイトの場合、その多くは上記条件を満たさないため、雇用保険への加入手続きを必要としないケースがよく見られます。
ただし例外もあり、例えば以下の人は雇用保険加入の例外となります。
- 昼間学生
- 長期欠勤者
- ダブルワーカー など
参考:厚生労働省「第4章被保険者について|雇用保険事務手続きの手引き」
より詳しい加入条件・手続きに関しては、以下の記事をご覧ください。
短期労働者・日雇い労働者が雇用保険に加入するケースは?
雇用保険は、被保険者の種類が分かれており、具体的には以下の4種類に分類されます。
参考:厚生労働省「第4章被保険者について|雇用保険事務手続きの手引き」
表の通り、短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者・高年齢被保険者以外の労働者が、一般被保険者として雇用保険に加入します。
そして、短期労働者・日雇い労働者であっても、一定の条件を満たしていれば雇用保険に加入することになります。
その中でも、日雇労働被保険者はやや特殊な性質を持っていて、労働者自身が、雇用保険日雇労働者被保険者手帳(日雇手帳)の交付を受けることにより、雇用保険に加入できます。(参考:厚生労働省「日雇派遣労働者の方へ~日雇労働求職者給付金について~」
事業主側は、日雇手帳を持つ労働者に対して所定の手続きを求められますから、その点にも注意が必要です。
雇用保険加入の対象外となるケース
単発バイト・短期アルバイトスタッフのほか、以下の労働者は雇用保険に加入できません。
参考:厚生労働省「第4章被保険者について|雇用保険事務手続きの手引き」
人事・労務担当者は、勤務日数や労働時間だけでなく、季節労働者や日雇い労働者の雇用保険の加入条件についても正しく理解することが求められます。
単発バイト・短期アルバイトスタッフ採⽤時の、雇用保険手続きに関する注意点
単発バイト・短期アルバイトスタッフを採用する際は、基本的に雇用保険加入を想定する必要はありませんが、日雇労働被保険者の要件を満たす場合は雇用保険に加入してもらうことになります。
また、将来的に長期での採用も検討しているなら、その場合もやはり雇用保険への加入を想定しておく必要があります。
採用当初は単発バイト・短期アルバイトスタッフとして働くとしても、雇用保険の加入条件は労働状況とともに変化していくため、スタッフ個々の労働状況に応じた準備も大切です。
以下に、単発バイト・短期アルバイトスタッフ採用時の、雇用保険手続きに関する注意点をご紹介します。
雇用保険印紙の貼付
採用したスタッフが日雇労働被保険者であった場合、日雇手帳に「雇用保険印紙」を貼付し、あらかじめ届出済みの印影をもって消印することによって、雇用保険料を納付します。
これを雇用保険印紙保険料といい、雇用保険印紙を購入するためには、ハローワークで「雇用保険印紙購入通帳交付申請書」を提出し、通帳の交付を受けた後、その通帳で郵便局から必要な枚数を購入しなければなりません。印紙の種類・保険料等は以下の通りです。
賃金によって等級別に分かれているので、その点にも注意しましょう。
なお、印紙保険料の負担割合は、事業主と労働者で半々です。例えば、第1級の印紙保険料の負担割合は【事業主/労働者=88円/88円】となります。
一般保険料の納付義務もある
日雇労働被保険者を雇用した場合は、雇用保険印紙だけでなく、一般保険料納付の義務もあります。
一般保険料は、事業の種類ごとに定められる保険料率で算出し、2022年度は大まかに以下のような数値となります。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和4年度雇用保険料率のご案内」
仮に、2022年5月1日に、賃金月額が9,000円の日雇い労働者を雇用した一般事業の事業主が、日雇い労働者負担分の保険料を計算する場合、【73円(146円÷2)+27円(9,000円×3/1,000)=100円】上記が合計金額となります。
採用人数と長期スタッフの管理
業種・職種にもよりますが、単発バイト・短期アルバイトスタッフを雇用する場面では、概して多くの人員を募集することになるでしょう。
具体的には、イベント設営スタッフ・新店舗オープン前の搬入スタッフなどが該当します。多数のスタッフを短期雇用するということは、それだけ労務手続きも煩雑になります。
自社の状況によっては、直接勤務するスタッフの採用以外の部分で、労務スタッフを増やすことも想定しなければならないでしょう。
また、単発バイト・短期アルバイトスタッフの中でも優秀な人材をスカウトして、これから長期で働いてもらいたい場合、雇用保険の加入手続きが必要になってきます。
いつ・誰が・どのような条件で採用されたのか、情報を一つひとつ区分して保管しないと、後々になって加入漏れなどが起こるリスクがありますから、自動処理が可能なシステムの導入などを検討しておきましょう。
単発バイト・短期アルバイト雇用の一般的なアルバイト雇用との手続きの違いに関しては、こちらでまとめて解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
短期アルバイト雇用は、通常のアルバイト雇用と比べて、手続きの流れや加入すべき保険の種類などが変わってきます。
源泉徴収においても違いがありますから、多数の短期アルバイトを継続的に採用する場合は、労務体制の強化や専用システム導入を検討しましょう。