能力以外の事情で不採用にせざるを得なかった応募者や、他の企業に行ってしまった辞退者など、機会があれば自社で働いて欲しかった人材を何らかの形でストックできれば、安定した採用の実現につながります。
そこで役に立つのが「タレントプール」です。自社独自のタレントプールを構築しておけば、採用のタイミング次第で、自社から優秀な人材にアプローチすることが可能になります。
一から採用活動を進める手間が省ける分、採用コスト削減にもつながり、急な人材不足の解決にも役立ちます。この記事では、タレントプールの仕組みを説明するとともに、メリット・活用事例についてもご紹介します。
正社員にもアルバイトにも効果的な採⽤⼿法「タレントプール」とは
新しい人材の採用は、単純に能力だけで判断できるものではなく、自社や応募者の事情にも左右されます。
タレントプールを構築することにより、正社員・アルバイト問わず、自社に都合の良いタイミングで人材を採用できる確率が高まります。
タレントプールの仕組み
タレントプールとは、タレント(才能)をプール(蓄積)するための仕組みのことで、優秀な人材を中長期的に確保する目的で構築されます。
具体的には、採用活動のプロセスや過去の退職者につき、自社が優秀であると判断した人材をデータベース化したものを指すケースが多く見られます。
データベースの種類は問われず、紙媒体でも表計算ソフトであっても、一目見て「自社の採用候補リスト」と把握できるものならタレントプールに分類されます。
まとめると、「戦力として十分期待でき、タイミングが合えばすぐ採用したい人材をリストアップしたもの」が、タレントプールということになります。
タレントプールの活⽤が、企業にとって重要な理由
採用の現場において、タレントプールの活用が重視され始めているのは、企業が直面する採用活動の様々な課題を解消するためです。以下に、主なものをご紹介します。
○慢性的な人材不足
労働人口が減少している日本では、人材不足に悩まされる企業が一定数存在しています。帝国データバンクが2021年7月に行った調査によると、2020年7月時点と比較して、正社員・非正社員ともに従業員が不足していると回答した企業は増加傾向にあります。
少子高齢化の影響がより深刻になれば、企業の採用活動が難化することは避けられず、たくさんの応募先がある状況下では、応募者が一度不採用となった企業に興味を示す可能性も低いでしょう。できる限り優秀な応募者とのつながりを絶たないよう、どの企業でもタレントプールの活用が急がれます。
○個人の働き方の変化
かつて、優秀な人材のキャリアパスは、比較的分かりやすいルートが用意されていました。
しかし現代では、本業の合間に行う副業、自由な働き方を実践するギグワーク、自分でクライアントを開拓するフリーランスなど、個人の働き方の選択肢が増えています。
仕事を依頼するにあたり、自社の社員として雇用する以外の選択肢を模索するためには、例えばスポットでの採用や業務委託などを検討する方向で、多くの人材とのつながりを維持する必要があります。
その点において、採用候補者と緩い関係性を保てるタレントプールの構築は、変化の激しい状況を乗り切るための有効な手段になります。
○経験者・プロフェッショナルの確保
企業によっては、同業種で長年働いてきた経験者や、フリーランス経験の長いプロフェッショナルの確保が重要なケースも多いでしょう。
しかし、一般的な採用活動のプロセスでは、経験者・プロフェッショナルの採用に時間がかかりますし、不採用者・辞退者が増えれば採用にかかったコストが無駄になってしまいます。
そこで、過去に自社や系列企業等で働いていた人材の情報を、タレントプールという形でストックしておくと、自社のニーズに合致する人材にアプローチしやすくなります。
経験者・プロフェッショナルを要所要所で採用したい場合にも、タレントプールは役立ちます。
タレントプールを構築するメリット
企業がタレントプールを構築することは、採用活動の観点から見て多くの利点があります。
以下のメリットに魅力を感じるのであれば、早急にタレントプール構築の準備を進めることをおすすめします。
採用コスト削減
求人掲載費用や外注費用、採用担当者に支払う給与など、採用活動にはコストがつきものです。
せっかく大量の予算を投入して人材を雇っても、ミスマッチが起こるリスク・採用後に問題が発生するリスクは一定数存在しており、結果的に一人あたりの採用コストが高くついてしまうケースは珍しくありません。
しかし、タレントプールを活用して、採用候補にある程度当たりをつけておけば、採用活動の無駄を省くことにつながります。
また、すでに人材の情報を確保している分、新入教育等にかけるコストも削減できます。
タイムリーな人材採用
デジタル化にともない、業界問わず変化のスピードが速くなっている現代では、採用活動においてもフレキシブルな採用が求められます。
経験者を採用する際など、応募者のスキルや経歴によって、企業が採用に踏み切るタイミングも変わってくるでしょう。
そのような場面で求人サイトや転職エージェントを活用する場合、どうしても意中の人材を採用するまでに時間がかかってしまい、結果的にビジネスチャンスを逃すおそれもあります。
タレントプールが充実していれば、こういった既存の採用活動にかかる手間を大幅に省けるため、タイムリーな人材採用を実現できます。
不採用者・辞退者へのアプローチが容易になる
不採用者・辞退者へのアプローチのハードルが低くなることも、タレントプールを活用するメリットの一つに数えられます。
自社の予算や採用目的の都合から不採用となったものの、自社にとって有益と思われる採用候補者が多数存在していた場合、タレントプールに人材情報を登録・更新することには大きな意味があります。
タレントプールに人材情報を登録することで、例えば別ポジション・別セクションでの採用時など、諸々の事情から不採用にした人材に再度アプローチをかけることができます。
すでに選考プロセスを経ている人材にアプローチできるため、採用活動もスムーズに進められるでしょう。
タレントプールの活⽤事例
タレントプールの活用事例を知っておくと、自社で応用する際のイメージが浮かびやすくなります。
以下に、正規雇用・非正規雇用それぞれのケースで考える、タレントプールの活用事例についてご紹介します。
正規雇用|優秀な社員の獲得に活⽤
正規雇用でタレントプールを活用する場合、「将来的に自社で働いてもらえればメリットがある」人材をストックする目的で、中長期的な判断から活用されるケースが多いようです。
タレントプールに登録されている段階では、「企業」対「求職者」という堅苦しさを感じさせる関係性ではないため、気軽に登録できるような仕組みになっています。
アメリカの大手自動車メーカーであるGM(ゼネラルモーターズ)もタレントプールを導入しており、登録ページには「コミュニティへの参加を通して社会を変革しよう」というメッセージが記されています。
即採用・不採用を決定するニュアンスではなく、自社の想いに賛同する同士を集めるようなニュアンスで運用されているところに、タレントプールの特性が表れています。
非正規雇用|アルバイトや単発バイト、ギグワーカー採⽤で⼈⼿不⾜を解決
非正規雇用でタレントプールを活用する場合、現場を安定して回すための手段など、シフトを埋める現実的な解決策として採用されるイメージになるでしょう。
具体的には、メイン勤務者がシフトに入れない場面でのヘルプ要員として、タレントプール登録者を都度採用するケースなどが該当します。
事例の一つとして、当社のお仕事アプリ・matchboxでは、「現役従業員」「退職者」「単発/派遣バイトなどの勤務経験者」といったあらゆる人材層を人材プールに登録し、一元管理できる仕組みが構築されています。
大手コンビニフランチャイズ・医療・物流など幅広い分野で活用されており、今後もニーズは増えるものと推察されます。
タレントプールをもっと活用する上で知っておきたい「ダイレクトソーシング」
タレントプールにストックできる人数を増やし、適切に運用するためには、以下の要素も重要になってきます。
- 応募者に興味を持ってもらうためのブランディング
- 自社雇用に特化したシステム、プラットフォームの採用
特に非正規領域において、タレントプール活用でスポット採用の機会が増えることによる労務処理の負担増は無視できないものとなるため、スポットでの雇用(募集〜採用〜労務処理)に対応できるシステムが重要となってきます。
タレントプール活用による人材調達の仕組みは「ダイレクトソーシング」と呼ばれ、今後重要性が高まるものと推察されます。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
まとめ
自社独自のタレントプールを構築するには、相応の時間がかかりますが、一度情報をストックすると長期にわたり活用できます。
不採用者に対して、お祈りメールではなく「またの機会に一緒に働けることを心待ちにしております」といった文章を送れるようになるだけでも、自社の印象は大きく変わってくるはずです。