自社のパート・アルバイトの退職は、人事担当者としては残念なものです。企業としては、人材をひとり失うことになるので、新たな人材の確保に向けての行動が必要となります。

その一方で、退職するスタッフに対して、わざわざ時間をかけて何か行動を取る企業は現在少ないでしょう。

しかし、退職するスタッフに対して気持ちよく退職してもらうための行動も、実は今後の人材獲得や職場環境の向上に非常に重要になります。

その退職プロセスの中で重要となるのが「オフボーディング」です。この記事では、パート・アルバイトスタッフの退職体験の改善につながるオフボーディングについて、必要な背景・解説・効果的な仕組み作りなどについて解説します。

パート・アルバイト人材は採用・教育・離職の繰り返し

一部ハイクラスの人材を除いて、多くのパート・アルバイト人材は流動性の高い労働力です。

採用後に教育を行い、一人前以上の能力に成長してくれたとしても、諸々の事情からスタッフが離職することは避けられない現実があります。

厚生労働省の調査によると、平成29年の1年間でのアルバイト離職率平均は25.5%という数値が出ています。

入職率は28.4%なので、数字の面では入職者の方が多い計算になるわけですが、それでもかんたんに考えてよい数値ではありません。

長い間同じ職場に定着できない理由は、決して企業側だけにあるわけではないものの、スタッフの立場になって・親身になって考えなければ見えてこない部分もあります。

「パート・アルバイトの退職は当たり前」と捉えずに、職場環境の問題点や自社スタッフの退職の原因を明らかするための良い機会と捉えて対応する必要があります。また、ただでさえパート・アルバイト人材の採用難にある日本において、OBOGなどの自社のアルバイト経験者を即戦力の人材として活用することも視野に入れておきたいところです。

現代では、刻一刻と変化する環境の中で必要な人材の量と質を確保できるよう、人事には退職者の再雇用も含めて手を尽くすことが求められています。

退職する社員とのつながりを保つ「オフボーディング」

退職を検討しているスタッフを無理に引き戻そうとするのは、かえって逆効果に働くリスクがあります。

しかし、あたかも家族のように、新たな環境に「送り出す」手助けができたなら、スタッフの退職に対する印象も変わってきます。

その鍵となる取り組みの一つが「オフボーディング」で、適切な対応を行うことにより、自社従業員が企業に抱く悪い印象を緩和する・良い印象を植え付けるなどの効果が期待できます。

また、適切な仕組みを作ることで退職者とのつながりを保つことも可能です。退職者とのつながりは、採用・教育・退職を繰り返す必要のあるパート・アルバイト人材を抱える企業にとっての資産となるため、「オフボーディング」はこれからの日本で普及が進むであろう取り組みとなるでしょう。

オフボーディングとは

オフボーディングとは、自社従業員が離職する際に、諸々の流れがスムーズに進むようサポートする施策をいいます。

入社間もないスタッフのサポートを行う「オンボーディング」の対義語にあたり、今まで一緒に働いてきたスタッフを快く送り出すためのものです。

オフボーディングの必要性は、企業側の目的によりますが、一般的には退職するスタッフを将来のリソースとしてとらえるための施策と理解されています。

つまり、退職したスタッフに「機会があればまたこの会社に戻ってもいいかな」と思わせることが、オフボーディングの主な目的と言えます。

オフボーディングのメリット

オフボーディングを行うことで、退職するスタッフと企業との間に信頼関係が生まれると、いくつかのメリットが期待できます。

以下に、パート・アルバイトスタッフとの関係が深い企業を想定して、メリットをご紹介します。

退職を検討しているスタッフが思いとどまる

よほど明確かつ不可避な理由を持って相談している場合を除き、相談の段階では「辞めたいという気持ちが強い」ことを上司に伝えているだけのスタッフは、比較的多く見られます。

そこで、上司や人事側が退職するスタッフの事情や退職理由をしっかりと確認する機会を持つことで、話を聞いてもらったスタッフが「私の話を真剣に聞いてくれた」と退職を思いとどまる可能性があります。

今後につながる人間関係ができる

たとえスタッフが退職してしまったとしても、職場や人事に対する印象が良かった場合、今後につながる人間関係の構築が期待できます。

一度は職場を離れることがあったとしても、退職者に「また何かの機会に戻ってもいいかな」と思わせることができたら、会社を離れたスタッフを戦力に加えることも想定して採用活動が進めやすくなり、企業としては採用の選択肢を増やせます。

有効なフィードバックが得られる

会話の中から上司・人事が「なぜ辞めたいのか」を把握できれば、それをフィードバックして社内の環境を変える動きに発展させることもできます。

オフボーディングを適切に実施することで、貴重な戦力を失わずに済むだけでなく、将来の布石が打てることもメリットとなります。

企業価値が高まる

退職者が企業に対して嫌な気持ち・悪い気持ちを持ったまま離れてしまうと、その後にスタッフのSNSアカウントや口コミサイトなどで企業に対する悪評が書き込まれてしまうおそれがあります。

しかし、適切なオフボーディングによって退職者をケアすることにより、それが抑止力となって不満の拡散を避けられれば、結果的に企業価値が高まり、企業の悪いイメージを払拭することにつながります。

オフボーディングで実施すべき施策と、絶対にやってはいけないこと

実際にオフボーディングを実施するにあたり、積極的に取り組みたい施策がある一方、退職者に対して絶対にやってはいけないこともあります。

以下に、施策を考える基本的なスタンスと、企業がやってはいけないことについてご紹介します。

退職するスタッフのことを「最優先」で考えるスタンスで臨む

退職を控えるスタッフに対してオフボーディングを実施する場合、企業側は「企業としてできることは最大限協力する」スタンスで臨まなければなりません。

退職は企業の利益に反する行動であることから、どうしてもスタッフが企業に対して不安・不満を表に出しやすい部分は否めないため、極力スタッフに不快な思いをさせずに退職までの時間を過ごしてもらう必要があります。

具体的には、新しい職場に提出すべき書類の作成協力や、新しい生活の準備のための時間を考慮してシフトを組むなど、退職するスタッフが必要とすることはできる限り叶えることが求められます。

パート・アルバイトスタッフの退職は、企業側ではごく一部の戦力を失うだけの話としてイメージされがちですが、スタッフ一人の人生がかかった決断に対して軽い対応をするべきではありません。

可能であれば、送別会やお別れ会などのセレモニーを通して、自然な形で他のスタッフが応援できる環境を整えてあげましょう。

企業価値を下げる「やってはいけないこと」

オフボーディングの中で絶対にやってはいけないことは、退職するスタッフに対して不信感を抱かせないことです。

事情はどうあれ、社内で一緒に働いてきた仲間という意識を失わず、企業側の都合で対応を遅らせない・面倒事を避けないよう心がけたいものです。

離職が決まってから同僚などから露骨に無視される・罵倒されるなどの状況が散見された場合は、毅然とした態度で加害者に処分を下すなどの判断も必要です。

あくまでも、退職するスタッフの未来をおもんばかる姿勢が肝心です。

シフトカットポイント1

オフボーディングと合わせて実施したい、退職者を活用するための仕組みづくり

オフボーディングは、上で紹介したようにさまざまなメリットがあります。

そのメリットの1つである「スタッフと退職で終わらないつながり」に関しては、そのつながりを活用するための仕組みについてご紹介していきます。

オフボーディングと合わせて実施することで大きな効果を発揮するのでぜひ確認してみてください。

退職者活用の新たな仕組みとして、注目されているのが「アルムナイ制度」です。

このような元従業員を組織化して再雇用の機会をうかがう仕組みを取り入れている企業は年々増えてきています。

※さまざまな企業の退職者活用制度については、
コチラの記事「【アルバイト 退職者活用】 おかえりクルーに、ハッピーリターン制度!?企業の再雇用制度まとめ」にまとめてあります。

OBOGが、退職後も「1日単位で元の職場で働ける」仕組み

退職時点で、働いていた職場に対して良い印象を持っているスタッフは、将来的にOBOGとして働いてくれる可能性を秘めています。

ただ、転職や家庭の事情など、諸々の事情からシフトを組んで職場に戻れないスタッフの動きをすべてケアしようとするのは、あまり現実的ではありません。

そこで重要なのが、OBOGの都合を優先して、退職後も1日単位で元の職場で働ける仕組みを作ることです。

具体的には、OBOG側が空いているシフトを確認でき、空いている時間に勤務可能であるという意思を企業に伝えられるようなシステムの導入が必要になるでしょう。

アルバイト経験者(OBOG)のスポット採用ができるmatchbox

業務経験のある職場のOBOGを1日単位でスポット採用するために役立つのが、お仕事アプリmatchboxです。

現役従業員・OBOG・単発アルバイトなど、あらゆる人材の情報を一元管理して、人材の確保やシフトの調整、スポット採用に活用できます。

登録者は、アプリに掲載された自社の求人に応募できます。応募者は自分たちの都合に応じて手をあげることができるため、シフト管理者は必要な分だけ・必要な能力の人材を採用できます。

「いつも」ではなく「いつまでも」を実現

スタッフの人生を、企業が縛り付ける時代は終わりました。働く人それぞれが自分らしく生きる上で、企業とスタッフとの関係は、日に日に新しいものになってきています。

現役のスタッフだけでなく、今まで働いてくれていたスタッフもまた、企業活動を支える大切な存在です。

余裕ができたときに復帰してもらえる・新しい職場に嫌気が差したときに戻ってきてもらえるような、信頼関係を退職者と築くことが、企業にとって後々の大きな財産になるはずです。

まとめ

オフボーディングを適切に実施することは、退職予定のスタッフの気持ちを自社にとどめる・企業の評判を保つなどのメリットにつながります。

その上で、退職者を自社の予備戦力としてストックできれば、まさに鬼に金棒です。

今まで一緒に働いてきてくれたスタッフとのつながりを残すために、ぜひmatchboxをご活用ください。

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