働き方改革・新型コロナウイルスの影響などから、個人の働き方は様々な形に変化しつつあります。

プロジェクト単位で仕事を請け負うフリーランスや、空き時間を利用して単発の仕事を受けるギグワーカー、ITツールを駆使して様々な場所に移動しながら仕事をするノマドワーカーなどが代表的です。

中でも、ギグワークについては、日本国内では新しい働き方の一つに数えられます。

そのため、企業側がギグワークに従事する労働者を雇いたい場合、事前にギグワークに関する基礎知識を仕入れた上で、雇用側の負担についても知っておく必要があります。

この記事では、ギグワーカーの雇用システムに焦点を当てて、ギグワークを紹介している主な企業・サービスを取り上げつつ、制度導入に向けてどのような点に注意すべきなのかをご紹介します。

日本におけるギグワークとギグワーカー

まずは、日本におけるギグワーク・ギグワーカーの現状について、かんたんにお伝えします。もともとギグワークとは、英語の「gig」と「work」をかけあわせた造語です。

gig(ギグ)とは音楽に関するスラングの一つで、ジャズ・ロックミュージシャンなどが、一晩限りの契約でライブ演奏に参加することをいいます。

このことから、ギグワークという単語は「単発の仕事をこなす労働」という意味合いで用いられていることが多いです。

事業者側にとってのメリットとしては、スポット的な労働力を気軽に確保できること・従業員として正式な雇用契約を結ぶ必要がないことなどがあげられます。

ただ、日本国内の労働者の正社員志向は強いため、自社にとって必要十分な人材をギグワーカーだけでまかなうのは現実的ではないと考えられてきました。

ところが、新型コロナの影響によって、今までの固定シフトによる働き方が難しくなった人材が、ギグワーク市場に押し寄せる形となっており、新しい働き方に活路を見出した人が、それぞれの事情からギグワークに携わるようになりました。(参考:NHK「5倍に急増 ギグワーカーの実態は…」)

今後、この傾向が広がっていくものと予想される一方で、まだまだ日本では法制度も含めてあいまいな部分が少なくありません。

欧米ではギグワーカーの弱い立場が問題となっており、労働状況の改善・労働者の保護に向けた動きが進んでいるため、日本もまた同様の問題が顕在化しつつあります。

それでも、ギグワークの導入が自社にとってメリットがあると判断できれば、すすんでギグワークを効率化する仕組みを導入・運用する必要があり、ギグワークについて十分に理解した上で、優秀なギグワーカーを素早く戦力にする仕組みの構築が求められるでしょう。

ギグワークの歴史や最先端の働き方「ギグワーク3.0」に関してはこちらの特設ページで紹介しています。ぜひ目を通して見てください。

働き方の新時代 ギグワーク3.0

ギグワークを紹介している企業・サービス

ギグワークを紹介している企業・サービスについては、日々新しい事例が生まれています。

自社の事業形態に合致するものばかりとは限りませんが、今後の事業展開・ギグワーカーの安定活用を考えた際に、参考になる部分はたくさんあるはずです。

「Uber Eats」など飲食デリバリーやQコマース

2016年に日本に上陸したUber Eatsは、新型コロナウイルスの影響もあり、今や出前を頼む際のスタンダードな選択肢になりつつあります。

基本システムは、飲食店が用意する料理をユーザーがWeb上で注文し、ギグワーカーが配達を担当する形です。

配達を担当する区域の人口・取引先となる店舗の数によってパイが変わるため、総じて都市圏でのサービス提供になりがちですが、「MENU」のように待遇を厚くしてギグワーカーを集めようとしているケースもあります。

「Timee」や「シェアフル」など単発バイトマッチング

ギグワークを専門とする働き手だけでなく、副業目的で仕事を探している人にも役立つサービスが、Timee・シェアフルなどの単発バイトマッチングサービスです。

人気の案件はすぐに定員が埋まってしまうこともあるほどで、企業側の目線で考えれば、効率的にギグワーカーを集めることができるツールと言えます。

Timeeは、面接・登録会などが不要であり、ユーザーは雇用する側の評判をレビューでチェックできる仕組みとなっています。

企業側が適切な対応を取ることで、好案件としてユーザーに認知されれば、多くのギグワーカーを集められるでしょう。

シェアフルは、オフィスワークの割合が比較的多く、企業としてはオフィスワークのギグワーカーを採用したい場合に向いているとされます。

トライアル採用など、お試し採用から長期雇用につなげることもできるため、ワークサンプルテストの代用として活用することもできます。

アンケートモニターやデータ入力など在宅バイト

「マクロミル」などに代表されるアンケートモニターや、クラウドソーシングサイトのタスクに代表されるような在宅ワークの案件なども、ギグワークの一種に数えられます。

特別なスキルがない・自宅から出られない人でも、努力次第で副業レベルの額を稼げる点において、在宅という制限があるギグワーカーにとってはありがたい選択肢です。

企業側としても、運用次第では単価を安めに抑えられるため、コスパのよい選択肢と言えます。

ギグワークや単発バイトの求人サービスの選び方に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

ギグワークの雇用形態について

全国的に広がりを見せるギグワークですが、その雇用形態について、詳しいことはあまり知られていないというのが現状です。

なにしろ、UberEatsでさえ日本上陸が2016年のことですから、国内においてあまりにも歴史が浅く、統計らしい統計が見当たらない状況です。

そのため、ギグワーカーの雇用形態の解釈はまちまちで、ギグワーカーとフリーランスを同義で理解しているケースも見受けられます。

一口にギグワークといっても、企業によって働き方は異なるため、ギグワークの2種類の雇用形態を理解する必要があります。

業務委託型ギグワーク

業務委託型ギグワークとは、単発の業務を委託される成果報酬型のギグワークです。業務委託契約となるので、働き手は個人事業主となり、成果を提出した分だけ報酬が受け取れる形です。

そのため、このケースで働き手が収入を得た場合、原則として働き手が確定申告することとなります。事業収入もしくは雑収入として、稼いだ額に応じて個々人が申告することになりますから、企業側の労務にかかる手間やコストは少なくなります。

現在、多くの代表的なギグワークプラットフォームは主にこの業務委託型となっています。しかしながら、配達員など交通事故のリスクがあるギグワーカーに対して労災保険・雇用保険が適用されず、最低賃金の対象外となるなど、就業面での保護が十分でないことも問題となっています。

労災保険に関しては、厚生労働省が省令改正に向けて動くなど、労働条件の改善の傾向が見られますが、働き手は十分な社会保障を受けられず、「搾取」される構造であることは変わりません。

※2022年10月5日追記
労災保険の「特別加入」の対象が広がっており、2021年9月からは「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」「ITフリーランス」も対象となっています。参考:厚生労働省「令和3年9月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がりました

そのため、欧米各国で立場の弱い働き手を保護しようという動きが活発になってきており、今後の国内での動きに注視しておく必要があります。

雇用型ギグワーク

雇用型ギグワークとは、単発の仕事にマッチングする際、都度雇用契約を結ぶ形態のギグワークのことをいいます。

一般的な長期雇用のアルバイト同様に、労災保険・最低賃金の保障などがある点で、業務委託型ギグワークとは異なります。

雇用契約となる雇用型ギグワークにおいては、基本的に所得は給与所得となり、給与計算や源泉徴収などは原則として企業側が行います。

働き手としては、通常のアルバイトと同様の雇用関係のため安心して働くことができますが、企業側は、単発の仕事に対しても労務処理が必要となるため、適切な管理体制が必要となるでしょう。

雇用型ギグワークは、直接雇用となります。この直接雇用に関して、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

実体は労働者派遣契約なのに、業務委託契約を結んでしまうリスクもある

企業側がギグワーカーとの契約において特に気を付けたいのは、業務委託契約の意味するところを正しく理解せず、ギグワークを依頼してしまうケースです。

いわゆる偽装請負の問題がこれにあたり、例えば自社管轄でない店舗にギグワーカーを派遣してしまうと、偽装業務委託としてペナルティを課せられる可能性があります。

万一、ギグワーカー側にその点を指摘され社会問題化した場合、自社のイメージダウンは避けられません。

企業としては気軽に採用できる点が魅力のギグワーカーですが、その活用には慎重な姿勢が求められます。

ギグワーカーを雇用する場合、どんな労務が必要になるのか

雇用型ギグワークにおいては、基本的に所得は給与所得となり、給与計算や源泉徴収などは原則として企業側が行いますが、実際にギグワーカーと都度雇用契約を結ぶことを考えた場合、具体的にはどのような労務が必要になるのでしょうか。かんたんにまとめただけでも、実にこれだけの実務が求められます。

  • 源泉徴収
  • 税計算
  • 給与計算
  • 残業の扱い
  • 雇用契約
  • 勤怠管理
  • 給与支払い
  • 確定申告
  • 社保雇保管理
  • 外国人就業管理

単発案件が多いギグワークは、日額給与をベースに給与計算・源泉徴収を行う場面が多いことから、甲・乙欄だけの税計算とは異なり、給与所得の源泉徴収税額表の「丙」欄を見て税計算するケースも想定されます。

よって、個々のワーカーの勤怠管理情報を確認しながら、個別に計算をする面倒が発生します。

また、残業が発生した場合の賃金をどうするのかなど、雇用契約上の取り決めを守るための仕組みも事前に構築しておかなければなりません。源泉徴収票の発行など、確定申告への対応も、一人ひとりのギグワーカーに対して平等に行う準備が求められます。

その他、労働力として留学生などの外国人を雇うことを検討している場合、就業ルールを把握した上で人材の管理ができる体制を整える必要があります。

ギグワーカーを本格的に雇用する場合、自社のリソースで多数のギグワーカーを管理できるかどうか、入念にシミュレーションしておいた方がよいでしょう。

ギグワーカーを含む単発アルバイトの雇用に関して、くわしくはこちらの記事で紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

自社でギグワーク制度を構築する際の注意点

検討の結果、自社でギグワーク制度の構築に取り掛かる場合、課題は労務的なものだけではありません。

もちろん、労務面にかかるコストや業務上のリスク管理も重要なファクターではあるのですが、そもそも論として「採用活動はどうするのか」という観点からも、制度構築についてイメージをふくらませなければなりません。

例えば、自社の事情に合わせて管理システムの開発を一からスタートするとなると、相応の出費を覚悟しなければなりません。

また、システム開発・運用にともない、ギグワーカーの求人・面接に関する採用手続きの流れについてもまとめていく必要がありますから、初期投資とランニングコストの試算は必須です。

ギグワーカーの採用には、慎重な検討を必要とする有期雇用契約とは違い、迅速な採用・スピーディーかつ間違いのない処理の両立が求められます。

自社にそのノウハウがない状況で、新たにシステムや採用活動方針の構築を試みても、思ったような結果につながらないおそれがあります。

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このような事業者側の問題を解決する選択肢の一つとして、ギグワーク特化型のお仕事アプリを導入するという方法があります。

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まとめ

ギグワーカーの働き方は、主に業務委託型と雇用型の2種類の雇用形態があります。

雇用形態により、働き手側の就業面での保護のあり方や雇用側の負担の大きさも異なります。

雇用側の負担は、既存の採用活動で考慮する必要がない部分にまで及ぶため、企業側・労働者側ともにギグワークに対する正しい知識が必要です。

特に、日本では正規雇用に対する信頼度が高い傾向にあるため、企業がギグワーカーを雇い入れるためには、労働者側に「安心感」を提供できるかどうかがポイントになります。

契約面・労務面に関して、労働者に不安を与えないためにも、抜け・漏れのないシステムの導入が望まれます。

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