シフト作成は、店長やリーダーにとって重要な業務です。しかし、会社都合のシフトカットの場合、労働基準法に基づき、休業手当という一定の手当の支給対象となることがあります。自社の都合でシフトカットを行ってしまうことは、「従業員の働く機会を奪う」というにほかなりません。この認識のもと安易なシフトカットは避け、万が一シフトカットが発生してしまった場合には休業手当の適切な支給等を行う等の対応が必要となります。

一方で、シフト作成には、従業員間の稼働バランスにも配慮する必要がありますし、企業経営上の観点もあいまって、なかなか経営目線ではあらかじめ皆が納得するシフト組みが難しいというのは企業から良く聞く悩みです。

シフト作成を行う前段階からこの休業手当の仕組み等を理解し、安易なシフトカットが発生しないようにすることは労務リスクの低減につながると考えます。

この記事では、シフトカットに関する注意点、具体的な対応策、シフトカットに頼らない解決策を詳しく解説します。

シフトカットとは?

シフトカットとは、一般に「従業員の働く予定であったシフトを、企業側の都合により、一方的に削減すること」を指します。人件費削減や業務量の減少などを理由に行われることが一般的です。

シフトカットの具体例

例えば、以下のようなケースがシフトカットの具体例として挙げられます。これらの場合、従業員は当初予定していた収入を得られる機会がなくなるため、生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

  • 店舗の売上低迷に伴い、全従業員の週の勤務時間を2時間ずつ削減する
  • 特定の曜日や時間帯の客足が減少したため、その時間帯に勤務していたスタッフのシフトをカットする
  • 新しい店舗運営方針により、業務効率化を図った結果、一部のスタッフの勤務日数を減らす
  • 会社の業績悪化により、従業員の雇用を維持するために、一時的に勤務日数を減らすよう要請する

会社都合のシフトカットは違法になるのか?

結論から言えば、シフトカットそれ自体が直ちに違法となるわけではありません。しかし、適切な手続きや対応を怠ると、違法性を問われたり、休業手当の支払い義務が発生したりするため、非常に慎重な判断が求められます。

企業としては、安易なシフトカットは避け、もし実施せざるを得ない場合は、その背景や理由を従業員に丁寧に説明し、休業手当の支払いについても明確な方針を示すことが、トラブル回避と従業員との信頼関係維持のために不可欠となります。

「会社都合の休業」の場合は休業手当の支払い義務が発生する

自宅待機命令や、一方的なシフト削減が「使用者の責めに帰すべき事由による休業」と判断された場合、企業には労働基準法第26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務が発生します。

「使用者の責めに帰すべき事由」とは、会社の経営判断、生産調整、業務量の減少、原材料の不足、機械の故障など、企業側の都合や予見可能であった事態を広く指します。例えば、以下のようなケースは「会社都合の休業」と判断されやすい傾向にあります。

  • 経営悪化による人員削減のため、一方的にシフトを減少させる
  • 客足が減少したことを理由に、従業員に早上がりを指示する
  • 当初約束していた勤務日数・時間を一方的に下回るシフトしか組まない

ただし、天災地変など、企業が最大限の努力をしても避けることができなかった「不可抗力」による休業の場合は、休業手当の支払い義務が発生しないこともあります。この「不可抗力」の判断は非常に厳しく、個別具体的に判断されるため注意が必要です。

自宅待機の業務命令は可能な場合がある

企業は、労働契約に基づき、従業員に対して業務上の指揮命令権を持っています。この指揮命令権には、従業員に「自宅で待機してください」と指示する権限も含まれます。したがって、経営状況の悪化や業務量の減少などを理由に、従業員に自宅待機を命じることは、業務命令として、法的に可能です。しかし、この場合でも休業手当は発生します。

シフトカットする前に確認しておきたい5つのポイント

企業の立場から見れば、シフトカットは苦肉の策ではあるものの、実施すれば従業員に多大な影響を与える点は無視できません。中途半端な判断をすると、法令違反となり、社会的制裁を受ける可能性があります。また従業員からの信頼も失う恐れがあります。知らずに労働基準法違反とならないよう、以下の5つのポイントを必ず確認しましょう。

1. 労働条件通知書・雇用契約書の内容を再確認

まず始めに、従業員との契約内容を抜け漏れなく、確認してください。所定労働時間やシフトに関する具体的な定めがある場合、それを下回るシフトカットは契約違反となる可能性があります。シフト変更に関する規定も確認し、合理的な範囲内の変更であるかを見極めましょう。

2. シフトカットの必要性と合理性を明確化

なぜシフトカットが必要なのか、客観的かつ合理的な理由を具体的に示せるように準備します。売上データや今後の見込みといった経営状況を明確に説明し、従業員の納得を得ることが重要です。また、コスト削減や業務効率化など、シフトカット以外の代替手段を検討した経緯も示すことで、判断の正当性が高まります。

3. 対象従業員の選定基準と公平性を確保

シフトカットの対象者を選ぶ際は、明確で客観的な基準を設定し、公平性を保つことが不可欠です。特定の従業員に不利益が偏らないよう注意し、差別と見なされない透明性のある選定を心がけましょう。勤務成績や貢献度を考慮する場合も、その評価基準を明確にしておくことが大切です。

4. 事前の説明と合意形成の努力を怠らない

シフトカットは、必ず事前に、対象となる従業員一人ひとりに丁寧に説明し、できる限り合意を得る努力をしてください。個別の面談を通じ、従業員の不安に寄り添い、質問に誠実に答える姿勢が重要です。口頭だけでなく、シフトカットの内容や期間、理由を記載した書面を交付し、記録を残しましょう。

5. 休業手当の支払い義務とその算定方法を確認

会社都合のシフトカットは、労働基準法第26条に基づき、「休業手当」の支払い義務が発生する可能性が高いです。自社のケースが「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるかを正確に判断し、平均賃金の60%以上を適切に算定・支払う準備をしましょう。不明な場合は、必ず弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

退職してもらう場合は手続きを慎重に行うこと

シフトカットが原因で従業員から退職の申し出があった場合、安易に「自己都合退職」として処理するのは避けるべきです。特に、従業員の失業給付(基本手当)の受給開始時期に影響が出る可能性があるため、企業側は細心の注意を払って手続きを進める必要があります。

あまりにもシフトカットが多い場合、ハローワーク側で会社都合退職となる可能性も!

あらかじめ労働条件として具体的な就労日数が定められているのに、契約更新時にシフトを減らす形で労働条件を提示された場合、そのスタッフは失業給付の際に「特定受給資格者」として認められる可能性があります。

ハローワークのHP(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html)にも記載がありますが、特定受給資格者の要件として「労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者」というものがあり、あまりにも想定されていた稼働日数等と実態が乖離している場合には、こちらに該当する可能性があります。

「特定受給資格者」と認定されると、通常の自己都合退職とは異なり、失業給付の給付制限期間が適用されずすぐに受給が開始されるほか給付日数にも自己都合退職よりも手厚い日数が支給されます。従業員にとっては大きなメリットですが、企業側にとっては、厚生労働省の雇い入れ系の助成金について一定期間受給制限が発生したりといった影響があります。

シフトカット問題を逆手にとった採用戦略もある

残念ながら、学生など立場が弱い人の事情につけ込み、意図的にシフトカットを行う企業も少なくありません。しかし、このシフトカット問題を逆手に取り、自社の強みとして優秀な人材を惹きつけている企業もあります。

シフトカット時の休業手当の計算方法

シフトカットに伴う休業手当の支払いは、企業の義務です。ここでは、労働基準法に基づいた休業手当の計算方法を、ポイントを絞って解説します。

① 基本となる休業手当の計算式

会社都合でシフトカット(休業)が発生した場合、企業は労働基準法第26条に基づき、平均賃金の60%以上を休業手当として支払う義務があります。

休業手当 = 平均賃金 × 0.6(60%) × 休業日数

この計算式が、休業手当を算出する上での基本となります。

② 平均賃金の計算方法

休業手当の基礎となる「平均賃金」は、以下の計算式で算出します。

平均賃金 = 算定期間の賃金総額 ÷ 算定期間の総日数
算定期間の賃金総額休業開始日(または直前の賃金締切日)から遡った過去3ヶ月間に支払われた賃金の総額です。基本給、通勤手当、役職手当、残業手当など、労働の対価として支払われた全ての賃金が含まれます(賞与など3ヶ月を超える期間ごとに支払われるものは除く)。
算定期間の総日数上記3ヶ月間の暦日数(休日も含む)です。

【計算例】

 休業開始日が8月1日、過去3ヶ月(5月1日~7月31日)の賃金総額が45万円、総日数が92日の場合: 平均賃金 = 450,000円 ÷ 92日 ≒ 4,891.30円

1日あたりの休業手当=4891.30円×0.6=2934.78

賃金の端数処理について 1時間あたり賃金額及び割増賃金額、1か月の賃金総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることができるため、2935円となります。

③ 時給制・日給制のパート・アルバイトには平均賃金の最低保障

時給制や日給制のパート・アルバイトの場合、上記(2)で計算した平均賃金が、以下の「最低保障額」を下回る場合は、その最低保障額を平均賃金として採用します。

最低保障額 = (算定期間の賃金総額) ÷ (算定期間の労働日数) × 0.6

日々の労働時間が短く、暦日で割ると平均賃金が著しく低くなるのを防ぐための規定です。つまり、「(2)で計算した平均賃金」と「(3)の最低保障額」を比較し、高い方の金額を平均賃金として使用する必要があります。

固定シフトにこだわらない新しい選択肢を検討の重要性

これまでのシフトカットに関する問題の多くは、固定シフトで働くパート・アルバイトに依存した人員配置に起因すると言えます。予測不能な業務量の変動に対応するためには、より柔軟な採用戦略が不可欠です。

単日アルバイトの「スポット採用」という選択肢

固定スタッフのスケジュール変更は容易ではありませんが、必要な時にだけ働ける人材をスポット採用で確保できれば、柔軟な人員配置が可能になります。1日単位でシフトを埋められるため、急な欠員や業務量の増加にもスムーズに対応でき、シフト管理者の負担を大幅に軽減できるでしょう。これは、シフトの安定化と人件費の最適化にも繋がります。

単日アルバイトの活用のデメリットとは?

最も大きな懸念点は、人材のスキルレベルが安定しないことです。日によって異なる業務経験や能力を持つ人材が現場に入る可能性があるため、シフト管理者はもちろん、他の既存スタッフも不安を感じるかもしれません。企業側がシフト投入前に個々の実力を把握しにくい点は、品質維持の観点からも注意が必要です。

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シフトカットに関するQ&A

シフトを決める前の段階でシフトに入れなければ「休業」にならない?

シフト確定前でも、雇用契約との乖離があれば「休業」と見なされる可能性は十分にあります。例えば、雇用契約では週30時間勤務の契約なのに、意図的に週10時間しかシフトを与えない場合、残りの時間分は「従業員側には働く意思があるにも関わらず労働の提供を拒否した」と見なされ、休業手当の支払い義務が生じかねません

客足減による休業は、「会社都合の休業」にあてはまる?

経営状況の変化による休業が「会社都合」に当たるか否かは、「使用者の責めに帰すべき事由」があったかどうかがポイントです。売上減少や客足減は、企業の経営判断や市場の変化に起因するため、特別な事情(大規模な自然災害など)がない限り、会社側の責任と見なされる傾向にあります。

シフトカットは慎重に対応することが重要

シフトカットは、適切に行えば違法ではありませんが、企業は従業員の休業手当や退職後の失業給付への法的配慮が求められます。現代の多様な働き方に対応し、持続可能な企業運営を目指すには、シフトカットに頼らない戦略が不可欠です。柔軟な人員配置を可能にする採用方法の導入や、日頃からの労働条件の明確化、従業員との丁寧なコミュニケーションが重要です。従業員が安心して働ける環境整備は、優秀な人材の定着を促し、企業の競争力を高める上で重要な投資となるでしょう。ぜひこの機会に、柔軟な人員調整と円滑なシフト管理を実現する「マッチボックス」の導入をご検討してみてはいかがでしょうか。

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