「人材不足で初めてアルバイトを雇用しようと考えている。正社員と労務管理は違うの?」
「繫忙期に備えてアルバイトの採用を開始したものの、労務管理の流れが把握できていない。アルバイトの労務管理は何をすればいいの?」
労働力の確保のために、アルバイトやパートなどの非正規雇用を活用する企業が増えています。
いざアルバイト、パートを雇用するとなると、どのように労務管理をすればいいのか焦る担当者は多いのではないでしょうか。
アルバイト、パートを雇用するときは段階に応じた労務管理が必要です。
労務管理の項目だけ見ると正社員の労務管理と似ている部分が多いですが、細かい部分でアルバイト、パートのみの労務管理条件があるので注意が必要です。
例えば、雇用保険や社会保険、一般健康診断は正社員の場合は原則全員が対象ですが、アルバイト・パートは条件に該当する人のみが対象です。
※別途事業場の規模など企業側の条件があります
このような細かな正社員とアルバイト・パートの労務管理の違いを理解しておかないと、大きなトラブルにつながる可能性があります。
アルバイト・パートの労務管理を適切に行うためにも、どのような労務管理が必要なのか理解しておきましょう。
そこでこの記事では、アルバイト・パートの労務管理に必要な項目とそれぞれのポイントをまとめてご紹介します。
正社員の労務管理との違いが分かるようにまとめているところも必見です。
この記事を最後まで読めばアルバイト・パートを雇用するときにどのような労務管理をするべきか理解できます。
アルバイト・パートの新規雇用時に適切な労務管理を行うためにも、ぜひ参考にしてみてください。
1.アルバイト・パートの労務管理で必要なこと一覧
労務管理とは、社員やアルバイト、パートなど全従業員の勤怠や福利厚生など労働に関連する必要な管理を指します。
アルバイト、パートを雇用するときには、段階に応じて下記のような労務管理が必要です。
段階 | 労務管理の内容 |
アルバイト・パートを雇用する | 雇用契約の手続きアルバイト、パートの労働条件を決めて労働条件通知書を交付する<必須書類>労働条件通知書 |
アルバイト・パート用就業規則の整備アルバイト、パート向けに必要な就業規則を検討して新しく就業規則を作成する、もしくは既存の就業規則を更新する<必須書類>就業規則 | |
雇用保険・社会保険の手続き加入対象となるアルバイト、パートの手続きを行う | |
法定外福利厚生アルバイト、パートへの福利厚生を検討する | |
アルバイト・パートが仕事をする | 勤怠管理出勤簿の作成と計算、有給休暇の付与を行う<必須書類>出勤簿 |
給与管理賃金台帳の作成と保管を行う<必須書類>賃金台帳 | |
安全健康管理対象となるアルバイト、パートへの一般健康診断とストレスチェックを実施する | |
アルバイト・パートが退職する | 退職や休職の手続きアルバイト、パートが退職、休暇するときの手続きをする |
労務管理の項目は社員の雇用時と大きく変わりませんが、細かい部分で異なる点が多々あります。
例えば、労働条件通知書に必ず記載しなければならない事項は、正社員とアルバイト、パートでは変わります。
また、有給休暇の付与の条件や社会保険、雇用保険の加入条件などもアルバイト、パートの基準を理解しなければなりません。
このような違いを把握してアルバイト、パートの労務管理をしないと、大きなトラブルに発展する可能性があるのです。
次の章からは、労務管理の項目ごとにアルバイト、パートの労務管理をするうえで知っておきたいポイントをご紹介します。
2.労務管理1:雇用契約の手続き
アルバイト、パートを雇用するとき正社員と同様に、労働条件通知書を交付する義務があります。
企業側とアルバイト、パート側で雇用に関する認識を合わせて、トラブルなく働くためです。
【労働基準法 第15条】 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。 |
出典:G-GOV「労働基準法」
アルバイト、パートの労働条件通知書を交付するときには次の2つがポイントになります。
アルバイト・パートの雇用契約の手続きのポイント |
1.労働条件通知書は必須項目を漏れなく明示する2.労働契約を結んだタイミングで労働条件通知書を明示する |
アルバイトやパートと雇用契約を結ぶときには、期限内に労働条件通知書を交付しなければなりません。
労務管理としてどのような手続きが必要なのか確認しておきましょう。
2-1.ポイント1:労働条件通知書は必須項目を漏れなく明示する
アルバイトやパートの労働条件通知書には、下記の項目を必ず記載しなければなりません。
とくに「パートタイム労働法で定められている項目」は正社員の労働条件通知書にはない項目なので、注意してください。
適応法律 | 必須項目 | 概要 |
労働基準法で定められている項目 | 労働契約の期間 | アルバイト、パートの契約期間を記載・労働契約に定めがあるケース:定められた雇用期間、更新があるか、更新の判断基準を記載・労働契約に定めがないケース:定めなしと記載 |
就業の場所と従事する業務内容 | アルバイト、パートの就労場所と具体的な業務内容を記載・就労の場所:契約するアルバイト、パートが働く場所を記載(会社で勤務する場合は会社の住所)・業務内容:アルバイト、パートが行う仕事内容を記載(レジ打ちと接客・調理補助・倉庫でのピッキング作業など) | |
始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項 | アルバイト、パートが勤務する時間や休日等を記載・仕事の始業、就業時間、休日や休暇を記載する(変動制やフレックスタイム制の場合はそのことも記載) | |
賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払の時期に関する事項 | アルバイト、パートの賃金の計算方法や締め日、支払い方法を記載・賃金の決定・計算:固定給や時給などの金額と計算方法を記載・賃金の締め切り・支払の時期:〇日締め〇日支払いなど締め日と支払い時期を記載・支払い方法:銀行振込や手渡しなどの支払い方法を記載 | |
パートタイム労働法で定められている項目 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) | 退職の手続きや条件について記載 |
昇給の有無 | 契約期間内に昇給の可能性があるか記載 | |
賞与の有無 | 賞与の支払いがあるか記載 | |
退職金の有無 | 退職金があるか記載 | |
相談窓口の明記 | パート、アルバイトが相談できる窓口(相談に対応するために整備されている窓口)を記載 |
必須事項の他に、下記事項が「相対的明示事項(口頭の明示でもいい事項)」として定められています。
労働条件通知書に記載する義務はありませんが、パート、アルバイトと企業側で認識を合わせるためにも明確にしておきましょう。
【相対的明示事項】 1.退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項2.臨時に支払われる賃金・賞与など に関する事項3.労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項4.安全衛生に関する事項5.職業訓練に関する事項6.災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項7.表彰、制裁に関する事項8.休職に関する事項 |
労働条件通知書は必須項目を網羅していれば書式は問いませんが、一例として下記を参考にしてみてください。
【労働条件通知書の必須項目を記載しないと罰金の対象になる】 労働条件通知書の必須項目を明示せず、アルバイト、パートを雇入れた場合は罰金の対象になります。 ・労働基準法で定められている項目部分を記載しない場合:30万円以下の罰金・パートタイム労働法で定められている項目部分を記載しない場合:行政指導での改善が見られないときはアルバイト、パート1名の契約につき10万円以下の過料 「労働条件通知書さえ作成すればどのような内容でもいい」わけではありません。明示が必要な条件を把握して、労働条件通知書を作成するようにしましょう。 |
2-2.ポイント2:労働契約を結んだタイミングで労働条件通知書を明示する
労働条件通知書は、パート、アルバイトと労働契約を結んだタイミングで明示しなければなりません。
明示方法は書面が原則ですが、アルバイト、パートが希望した場合は下記の方法で明示することが可能です。
【書面以外の労働条件通知書の明示方法】 ・FAX・Eメール・LINEなどのSNSメッセージ ※アルバイト、パートが出力して保存できる方法を選択する |
参考:厚生労働省「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」
書面以外の方法で明示する場合はアルバイト、パートが自身で出力し保存できるよう工夫しましょう。
例えば、EメールやLINEなどのSNSメッセージで明示する場合は、労働条件通知書を添付ファイル形式で送付して受け取りの確認をするとトラブルを回避できます。
【雇用契約書の交付義務はない】 アルバイト、パートと労働契約を結ぶときに「雇用契約書」を作成して押印をもらうケースがありますが、法律上の義務はありません。 口頭であっても双方が同意すれば、雇用契約が成立します。 ただし、労働契約法では労働契約の内容をできる限り書面で確認できるようにすると定めています。契約上のトラブルを回避するためにも、雇用契約書を作成したほうがいいでしょう。 |
3.労務管理2:アルバイト・パート用就業規則の整備
労働基準法では、雇用形態問わず常時10名以上を雇用している事業者を対象に、就業規則を作成し労働基準監督署へ届出することが義務付けられています。
【労働基準法 第89条】 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。 |
出典:G-GOV「労働基準法」
既に常時雇用している正社員や契約社員が10名以上在籍している企業は、就業規則の作成、提出が済んでいるでしょう。
既に提出している就業規則にパート、アルバイト向けの規則が記載されていないと、正社員用の就業規則がアルバイト、パートにも適用されることになります。
そのため、アルバイト、パート用に就業規則を整備することが好ましいです。
アルバイト、パート用の就業規則を作成するときは下記の2つがポイントになります。
アルバイト・パート用の就業規則を整備するときのポイント |
1.アルバイト・パート向けの就業規則を作成することが好ましい2.アルバイト・パート向けの就業規則を作成した場合は労働基準監督署へ届出が必要 |
就業規則はあらゆる労務管理の基盤となる規則を決める工程なので疎かにせず、慎重に進めるようにしましょう。
3-1.ポイント1:アルバイト・パート向けの就業規則を作成することが好ましい
就業規則にアルバイト、パート向けの規則が記載されていないと、正社員用の就業規則がアルバイト、パートに適用されます。
正社員とアルバイト、パートは賞与や勤務形態を始め大きく異なる部分があります。
例えば、合理的な範囲で賞与や給与の基準が異なることがあるでしょう。
そのため、既存の就業規則をそのままアルバイト、パートに適用すると、雇用後に大きなトラブルにつながる可能性があるのです。
そこで、既存の就業規則アルバイト、パート向けの規則を追加するもしくは、アルバイト、パート向けの就業規則を新しく作成することが好ましいです。
【アルバイト・パート向けの就業規則を作成する方法】 ・既存の就業規則にパート、アルバイト向けの規則を追加する・パート、アルバイト向けの就業規則を新しく作成する |
アルバイト、パート向けの就業規則を検討する場合は自社で雇用しているアルバイト、パートの意見を聞きつつ、検討するようにしましょう。
【パート、アルバイト向けの就業規則で確認したい項目例】 ・労働時間や休日についての規則・年次有給休暇や産休、介護休暇などの規則・賃金が上がる条件や賞与に関する規則・退職や懲戒に関する規則 |
※就業規則の必須項目は正社員の就業規則と同様です
パート、アルバイト向けの就業規則の見本は、下記を参考にしてみてください。
3-2.ポイント2:アルバイト・パート向けの就業規則を作成した場合は労働基準監督署へ届出が必要
既存の就業規則とは別にアルバイト、パート向けの就業規則を作成した場合は、労働基準監督署へ届出が必要です。
このときに労働者の代表の意見を聞いたうえで作成した意見書を添付しなければなりません。
労働者の代表は、下記のいずれかに該当する労働者です。
【労働者の代表】 ・労働者の過半数で組織する労働組合・労働者の過半数を代表する者 |
※労働者の過半数は正社員とパート、アルバイトを含めた労働者の過半数を代表する労働者
参考:厚生労働省鹿児島労働局「パートタイマーに対する就業規則を作成しましたが、パートタイマーの従業員からだけ、意見を聴取すればよいのでしょうか。」
労働組合や代表する労働者にアルバイト、パート向けの就業規則の内容を確認してもらい、意見の有無を意見書に記載します。
ただし、アルバイト、パート向けの就労規則は正社員には判断しにくい部分が多いです。
そこで、アルバイト、パート向けの説明会などを実施し、リアルな意見を参考にすることも検討してみてください。
【就労規則を変更する場合も労働基準監督署へ届出が必要】 既存の就業規則にアルバイト、パート向けの規則を追加し内容を変更した場合にも、新しく就業規則を作成した場合と同様に意見書を作成して労働基準監督署へ届出する必要があります。 |
4.労務管理3:雇用保険・社会保険の手続き
アルバイト、パートは、一定条件を満たすと雇用保険・社会保険の対象になります。
対象となるアルバイト、パートを雇用した場合は届け出をする機関に書類を提出し、雇用保険・社会保険に加入する必要があります。
ここでは、アルバイト、パートの雇用保険・社会保険手続きのポイントをご紹介します。
アルバイト・パートの雇用保険・社会保険のポイント |
1.一定の条件を満たすと雇用保険の対象になる2.一定の条件を満たすと社会保険の対象になる |
雇用保険・社会保険の仕組みは正社員と同じですが加入時の条件が変わるので、見極められるようにしておきましょう。
4-1.ポイント1:一定の条件を満たすと雇用保険の対象になる
アルバイト、パートは、基本的に下記の2つの条件を満たすと雇用保険の対象になります。
【アルバイト・パートの雇用保険適用基準】 1.1週間の所定労働時間が20時間以上2.31日以上引き続き雇用されることが見込まれる(短期契約を繰り返す場合を含む) |
※条件を満たしていても例外あり
参考:北海道ハローワーク「アルバイトやパートタイム労働者は雇用保険の被保険者となりますか。」
例えば、1週間に6時間、週4日勤務しているパートは1週間の所定労働時間が20時間以上です。
1ヶ月以上引き続き雇用する見込みがあると、雇用保険の対象です。
ただし、上記の条件に該当しても昼間学校に通っている学生は雇用保険に加入できないので、注意してください。
対象となるアルバイト、パートを雇入れた場合は、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
ハローワークが交付した「雇用保険被保険者証」は、アルバイト、パートに渡して各自保管してもらいます。
アルバイト、パートが雇用保険の対象になると加入手続きと毎月の賃金からの控除が発生するので、念頭に置いておきましょう。
4-2.ポイント2:一定の条件を満たすと社会保険の対象になる
アルバイト、パートは、基本的に下記のすべての条件を満たすと社会保険義務化の対象になります。
【アルバイト・パートの社会保険適用基準】 1.1週間の所定労働時間が20時間以上2.毎月の賃金が8.8万円以上3.2ヶ月以上の雇用の見込みがある4.学生ではない5.従業員数101名以上の企業である |
参考:政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。」
例えば、従業員数200名の企業で学生ではなく毎週4日25時間勤務していて毎月の賃金が8.8万円以上、1年間の雇用契約を結んでいるアルバイトは、社会保険の対象です。
アルバイト、パートの社会保険手続きをする場合は、基本的に雇用してから5日以内に必要な書類をまとめて提出します。
社会保険の項目 | 届け出先 | 概要 |
厚生年金 | 日本年金機構事務センター | 日本年金機構に「被保険者資格取得届」などを提出する |
健康保険 | 健康保険組合など | 企業が加入している健康保険組合や全国健康保険協会に「被保険者資格取得届」などを提出する |
アルバイト、パートによっては国民年金に加入している場合や配偶者の健康保険に加入している場合があります。
これらの喪失手続きは本人が行う必要があるため、事前に労働管理担当者からのアナウンスが必要でしょう。
5.労務管理4:法定外福利厚生
法定外福利厚生とは、企業が独自で設けている福利厚生のことです。
スポーツジムの割引や誕生日休暇、在宅勤務手当など企業が従業員満足度向上につながる様々な制度を用意します。
既に社員を雇用している企業では社員向けの福利厚生を用意しているかと思いますが、不合理な待遇差を設けないようにアルバイト、パートにも福利厚生の検討が必要です。
「働き方改革関連法」により改正された「パートタイム・有期雇用労働法」では、正社員とアルバイト、パート間の不合理な待遇差を禁止しているためです。
例えば、雇用形態が異なるだけの不合理な理由で、福利厚生の内容を区別することは禁止行為に該当します。
どうしても、福利厚生に差が生まれる場合は、誰もが納得できる合理的な説明をしなければなりません。
そのため、下記のように正社員とアルバイト、アルバイトに格差のない福利厚生を提供している企業が増えています。
【正社員とアルバイト、パートに同様の福利厚生を提供している例】 ・D社:雇用形態問わず入社から半年経過すると指定の福利厚生会社の会員になれる・E社:雇用形態問わず社員食堂や休憩室を提供している他、習得が必要な技能がある場合は教育制度を利用できる・C社:雇用形態問わず全社員を対象にスキルマップに沿った教育の機会を提供している |
参考:厚生労働省「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル第3章」
「アルバイトやパートには正社員のような福利厚生は不要なのでは」と考えないで、雇用形態問わず福利厚生を提供できるよう検討することが大切です。
6.労務管理5:勤怠管理
アルバイト、パートは正社員と同様に、勤怠管理をしなければなりません。
出勤簿の作成と保存が義務化されている他、一定の条件を満たす場合は有給休暇の付与が必要です。
とくに、有給休暇が付与される条件は正社員と異なるため、事前に把握しておく必要があるでしょう。
ここでは、アルバイト、パートの労務管理のポイントを解説するので、参考にしてみてください。
アルバイト・パートの勤怠管理のポイント |
1.出勤簿の作成、保存が義務化されている2アルバイト・パートでも有給休暇の対象になる場合がある |
6-1.ポイント1:出勤簿の作成、保存が義務化されている
アルバイト、パートは正社員と同様に、出勤簿の作成と保存が義務化されています。
正社員のみ出勤簿を作成し、アルバイト、パートは不要というわけではないので注意してください。
出勤簿は、下記の内容が分かるよう個別に情報を記入します。
【出勤簿に記入する項目】 ・出勤日と労働日数・始業時間と就業時間、労働時間・日ごとの休憩時間・時間外労働を行った日付と時刻、時間数・休日労働を行った日付と時刻、時間数・深夜労働を行った日、・時刻、時間数 |
出勤簿に規定のフォーマットはありませんが、一例として下記のように誰がいつ、どれくらい働いたのか分かるようにまとめるといいでしょう。
出典:厚生労働省「労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう」
出勤簿は、労働時間を正確に判断するための法定帳簿です。
最後に記帳した日から5年間保存しないと30万円以下の罰金または6ヶ月月以下の懲を課せられる可能性があるため、必ず作成し保管するようにしましょう。
【タイムカードは出勤簿の代わりとして使用できない】 アルバイト、パートの出退勤を管理するためにタイムカードを使用するケースがありますが、タイムカードを出勤簿の代わりとして扱うことはできません。 タイムカードはアルバイトやパート自身が打刻するものなので、正確性や信憑性に欠けるためです。タイムカードを使用している場合は、タイムカードとは別に出勤簿を作成して保管する必要があります。 |
6-2.ポイント2:アルバイト・パートでも有給休暇の対象になる場合がある
アルバイト、パートも下記の2つの条件を満たせば、有給休暇の付与対象になります。
【アルバイト、パートの有給休暇の条件】 ・雇入れた日から6ヶ月継続して勤務している・全労働日の8割以上を出勤している |
例えば、半年以上前に雇用したパートが病気などでお休みすることなく従事している場合は、有給休暇の対象になります。
有給休暇の日数は法律により定められているので、確認しておきましょう。
参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
ここで注意しなければならないのは、正社員とアルバイト、パートは反映される有給休暇の日数が異なることです。
下記は通常勤務(1日8時間、週40時間)をしている労働省の有給休暇付与日数ですが、アルバイト、パートの付与日数とは異なるため注意してください、
参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
7.労務管理6:給与管理
アルバイト、パートは正社員と同様に、賃金台帳を作成して保管する義務があります。
それだけでなく、1ヶ月の賃金などによっては源泉徴収の必要が出てきます。
ここでは、アルバイト、パートの給与管理をするときに知っておきたい2つのポイントをご紹介します。
適切な給与管理をするためにも参考にしてみてください。
アルバイト・パートの給与管理のポイント |
1.賃金台帳の作成、保存が義務化されている2.源泉徴収の処理が必要になる |
7-1.ポイント1:賃金台帳の作成、保存が義務化されている
アルバイト、パートも正社員と同様に、賃金台帳を作成して5年間保管する義務があります。
1日のみのアルバイトや短期間のパートであっても、賃金台帳は必要です(1ヶ月未満の場合は賃金の対象となる期間のみ記載不要)。
賃金台帳には、下記の項目を記入するようにしましょう。
【賃金台帳に記入する項目】 ・氏名・性別・賃金の対象となる期間・労働日数・労働時間数・時間外労働や休日労働、深夜労働の労働時間数・基本給や手当等の種類と金額・控除科目と金額・賃金の額・賃金計算の基礎となる事項 |
参考:厚生労働省愛媛労働局「労働者名簿及び賃金台帳の調製と記録の保存(第107条~第109条)」
上記の項目が網羅できていれば書式は問いませんが、一例として下記のような書式を参考にしてみてください。
【アルバイト・パートの賃金支払いにも「賃金支払いの5原則」が適用される】 アルバイト、パートの賃金支払いにも、正社員と同様に「賃金支払いの5原則」が適用されます。 <賃金支払いの5原則>・通貨で・賃金の全額を・直接労働者に・毎月1回以上・一定の期日を定めて支払う 「アルバイトとパートの賃金は2ヶ月に1回の支払いで問題ない」「準備ができ次第支払う」などの運用はできません。 正社員と同じように、1ヶ月に1回以上全額を支払う体制を整えてください。 |
参考:厚生労働省「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。」
7-2.ポイント2:源泉徴収の処理が必要になる
アルバイト、パートは、源泉徴収の処理が必要なケースがあります。
源泉徴収とは、労働者の収入に応じて発生する所得税を給与から天引きして、労働者個人に代わり企業が国に納税する仕組みです。
事業主は源泉徴収義務者なので、適切な処理をしなければなりません。
アルバイト、パートは下記のいずれかに該当すると、源泉徴収の対象になります。
【アルバイト・パートが源泉徴収の対象になる条件】 ・1ヶ月の賃金が8.8万円以上(社会保険料等控除後)・扶養控除等申告書を提出していない |
パート、アルバイトが対象者になる場合は「源泉徴収税額表」を参考にしながら、給与に応じた源泉所得税を差し引きます。
詳しい処理は企業担当の会計士や税理士が行うかと思いますが、アルバイト、パートを雇用することで源泉徴収の処理が発生することは知っておくといいでしょう。
8.労務管理7:安全健康管理
アルバイト、パートを雇用するときには、安全や健康管理にも配慮する必要があります。
とくに一般健康診断やストレスチェックは対象となるアルバイト、パートもいるので、社員以外は実施しないと考えないようにしましょう。
ここでは、アルバイト、パートの安全健康管理のポイントをご紹介します。
アルバイト・パートの安全健康管理のポイント |
1.条件に該当するアルバイト・パートは一般健康診断の対象になる2.アルバイト・パートも労災保険給付の対象になる |
労務管理では正社員だけでなくアルバイト、パートの安全や健康を考えていく必要があるので、チェックしてみてください。
8-1.ポイント1:条件に該当するアルバイト・パートは一般健康診断の対象になる
一般健康診断は、常時50名以上労働者を使用する事業場が対象です。
アルバイト、パートは下記の2つの条件を満たすと、一般健康診断の対象になります。
【アルバイト・パートが一般健康診断の対象となる条件】 1.1年以上の長さで雇用契約をしている、雇用期間の定めがない、既に1年以上雇用した実績があるのいずれかに該当する2.1週間あたりの労働時間数が通常労働者の4分の3以上を満たしている |
※例外あり
参考:厚生労働省東京労務局「.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?」
例えば、週に4回合計30時間以上働いていて2年契約をしているパートがいる場合は、一般健康診断の対象になります。
義務となっていない場合でも、同種の業務に従事する1週間あたりの労働時間数の2分の1以上を満たしている場合は、一般健康診断を実施することが望ましいとされています。
アルバイトやパートでも一般健康診断の対象者になる場合があるので、事前に条件に該当しないか確認しておきましょう。
【ストレスチェックの対象者は一般健康診断の対象者と同じ】 常時50名以上労働者を使用する事業場には、年に1回のストレスチェックが義務化されています。 ストレスチェックの対象者は一般健康診断の対象者と同じなので、一般健康診断の対象となったアルバイト、パートはストレスチェックも受ける必要があります。 |
8-2.ポイント2:アルバイト・パートも労災保険給付の対象になる
労災保険は雇用形態問わず、事業主との間に雇用関係があり賃金が発生している労働者が対象です。
そのため、自社で雇用して賃金が発生しているアルバイト、パートは労災保険給付の対象になります。
実際に、アルバイト、パートを対象に労働災害として認定された事例は数多くあります。
【アルバイトを対象とした労働災害の事例】 ファーストフード店では換気用送風機の軸が破損したのにも関わらず、営業を続けていました。この日は厨房の窓を開けたり扇風機を設置したりして営業を開始。 昼頃にはシェイクマシンの修理作業を行う業者も来ましたが、厨房内のガス器具等をフル稼働させて調理している状況でした。 シェイクマシンの修理作業を行う業者が体調不良を訴え、続いてアルバイト2名も体調不良を訴えました。3名は救急車で搬送されて、一酸化炭素中毒と診断を受けました。 |
参考:厚生労働省職場の安全サイト「ファーストフード店の厨房で調理中に3人が一酸化炭素中毒」
労働災害が発生すると、事業主の責任や義務が問われます。
事業主として適切な安全管理や指導ができていなかった場合には、刑事責任を負う可能性もあるでしょう。
安全衛生活動は社員を対象に実施するものと捉えず全従業員を対象に実施して、労働災害を起こさないよう予防することが重要です。
9.労務管理8:退職と休職の手続き
アルバイト、パートが退職をするときには正社員と同様にタイミングに応じた手続きが必要です。
また、就業規則に記載があれば休職や異動などの対応も可能です。
ここでは、アルバイト、パートの退職や休職に関するポイントをご紹介します。
アルバイト、パートの労務管理の流れを理解するためにも、参考にしてみてください。
アルバイト・パートの退職と休職手続きのポイント |
1.アルバイト・パートが退職する場合は手続きが必要2.アルバイト、パートでも休職できるケースがある |
9-1.ポイント1:アルバイト・パートが退職する場合は手続きが必要
アルバイトやパートが退職する場合は、社員の退職時と同様に手続きが必要です。
主な手続きには、下記のようなものがあります。
労務管理のタイミング | 主な労務管理の内容 |
退職日までにすること | ・退職届の受理(法律上の義務はないが就業規則に記載があれば必要)・退職日の決定・引き継ぎの実施 |
退職日にすること | ・貸与物の返却(制服など)・退職金を渡す(就業規則に記載がある場合) |
退職後にすること | ・社会保険と雇用保険の解除・離職票の送付(就業規則に記載がある場合)・源泉徴収票の送付 |
社会保険と雇用保険に加入しているアルバイト、パートの場合は、退職後に社員と同様の解除手続きが必要なので忘れないようにしましょう。
【労働条件通知書や就業規則に記載があれば異動を提案できる】 労働条件通知書や就業規則に異動の可能性がある旨を明示していれば、アルバイト、パートに異動を提案できます。 ・チェーン店の他店舗への異動・企業内の他部署への異動 などを提案し、異動先で活躍してもらうことも検討できます。 |
9-2.ポイント2:アルバイト、パートでも休職できるケースがある
アルバイト、パートから休職の申し出があった場合、就業規則に休職ができる旨の記載があれば休職を許可できます。
休職期間や休職中の手当も、就業規則の内容に沿って判断します。
例えば、就業規則に「3ヶ月の休職を許可できる」と記載がある場合は、3ヶ月までアルバイト、パートの休職を受け入れることが可能です。
3ヶ月以上休職が継続する場合は就業規則に記載があれば、そのまま退職になります。
休職は社員にしかない権利だと思われがちですが、就業規則に記載があればアルバイト、パートも対象になるので注意してください。
10.アルバイト・パートの労働管理に関するよくある質問
最後に、アルバイト、パートの労働管理に関するよくある質問をまとめました。
アルバイトとパートの労働管理は正社員と異なる点があるため、参考にしてみてください。
10-1.Q.ダブルワークをしているアルバイト・パートがいます。注意点はありますか?
A.ダブルワークをしている場合は労働時間が、下記のように通算されます。
・所定労働時間の通算:先に契約をした方から後に契約をした方の順に通算
・所定外労働時間の通算:実際に所定外労働が行われる順に通算
つまり、既に他社で働いていることを知りながら雇用をした2社目のほうが、割増賃金を多く支払うことになるのです。
ダブルワークをしているアルバイト、パートを雇用する場合には、他の仕事とのバランスや勤務時間の調整を検討しながら雇用する必要があるでしょう。
参考:厚生労働省「副業・兼業における労働時間の通算について」
10-2.Q.外国人留学生はアルバイトとして雇用できますか?
A.資格外活動許可を受けてアルバイトをする外国人は、1週間28時間以内のアルバイト雇用が可能です(長期休暇などの例外あり)。
資格外活動許可を取得しており条件に該当する業種であれば、問題なくアルバイトができます。
参考:厚生労働省東京労働局「留学生をアルバイトとして雇うことは可能ですか。」
10-3.Q.研修期間中は最低賃金を下回る賃金でも問題ないですか?
A.アルバイトやパートは、都道府県ごとに定められた最低賃金を下回ることはできません。
研修期間や見習いであっても、最低賃金を下回る賃金を設定できないので、注意してください。
10-4.Q.18歳以下の学生をアルバイトとして雇用するときの注意点はありますか?
A.18歳以下の学生をアルバイトとして雇用する場合は、下記の3つに注意しましょう。
1.22時~翌5時までの時間は労働できない
2.労働時間は週40時間、1日8時間を超えることはできない
3.危険、有害な業務は禁止または制限がある
学校によってはアルバイトを禁止している可能性があるので、確認するようにしてください。
10-5.Q.アルバイトとパートの労務管理にあったほうがいい書類はありますか?
A.企業の規模やアルバイト、パートが携わる業務内容にもよりますが、下記のような書類を用意するケースがあります。
・ルール、規則を守る誓約書
・資格を証明する書類
・通勤方法の申請書
・健康診断書
例えば、有資格者のみが携わる業務に従事する場合は、資格を証明する書類を提出することがあります。
また、通勤手当を支払う場合は通勤方法の申請書をもとに費用を算出するケースも多いです。
10-6.Q.アルバイトとパートも社員と同じように労働者名簿が必要ですか?
A.賃金の支払いが発生している場合は、アルバイトとパートも社員と同じように労働者名簿が必要です。
正社員と同様に氏名や生年月日、住所などを記載した労働者名簿を作成して保管しましょう。
ただし、日雇労働者の場合は、日々雇用契約を結ぶ形式なので、労働者名簿は必要ありません。
11.まとめ
今回は、アルバイト、パートの労務管理について詳しく解説しました。
アルバイト、パートを雇用するときにどのような労務管理をしなければならないのか理解できたかと思います。
最後にこの記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。
〇アルバイト、パートを雇用するときに必要な労務管理は下記のとおり
労務管理の項目 | ポイント |
雇用契約の手続き | ・労働条件通知書は必須項目を漏れなく明示する・労働契約を結んだタイミングで労働条件通知書を明示する |
アルバイト・パート用の就業規則の整備 | ・アルバイト・パート向けの就業規則を作成することが好ましい・アルバイト・パート向けの就業規則を作成した場合は労働基準監督署へ届出が必要 |
雇用保険・社会保険の手続き | ・一定の条件を満たすと雇用保険の対象になる・一定の条件を満たすと社会保険の対象になる |
法定外福利厚生 | 法定外福利厚生に不合理な待遇差を設けない |
勤怠管理 | ・出勤簿の作成、保存が義務化されている・アルバイト・パートでも有給休暇の対象になる場合がある |
給与管理 | ・賃金台帳の作成、保存が義務化されている・源泉徴収の処理が必要になる |
安全健康管理 | ・条件に該当するアルバイト・パートは一般健康診断の対象になる・アルバイト・パートも労災保険給付の対象になる |
退職と休職の手続き | ・アルバイト・パートが退職する場合は手続きが必要・アルバイト、パートでも休職できるケースがある |
〇アルバイト、パートの労務管理は手間がかかるのでツールを活用して効率化することがおすすめ
アルバイト、パートを雇用するときは、適切な労務管理が求められます。
負担を減らしつつ正しく管理するために、ぜひ「matchbox plus」をご活用ください。