店長・リーダー職がシフトを組むにあたり、スタッフをバランスよく配置することはどの職場でも重要ですが、コロナ禍では逆に「シフトカット」が問題となっています。
企業は自社の都合から働く機会を与えられないスタッフに対して、休業手当などの給付も想定しながら雇用を守らなければならない立場にあります。
しかし緊急事態宣言下において、飲食業など営業時間の短縮を余儀なくされるケースも増大しており、中には違法なシフトカットを疑われるケースもあるようです。
労働基準法違反となることを知らないまま、労働日数・時間を調整してしまうと、後々になってトラブルに発展してしまうおそれがあります。
この記事では、シフトカットについて、注意すべきポイントや具体的な対応方法、シフトカットに頼らない解決策などをご紹介します。
アルバイトの労働基準法に関して、こちらの記事で紹介しております。あわせて参考にしてみてください。
コロナ禍でシフトカットがもたらした「パート・アルバイトへの影響」
2021年2月に行われた野村総合研究所のアンケート調査によると、パート・アルバイト女性の3割にあたる29.0%が、新型コロナ以前と比べてシフトが減少していると回答しています。
男性については3割強の33.9%と、男女問わず勤務日数は減少傾向にあります。その中で、コロナ以前に比べて「シフトが5割以上減少している」と回答している人は、男性で48.5%・女性で45.2%という数値が出ており、新型コロナウイルスは確実に働き手の生活をおびやかしていることが分かります。
しかも、シフト減に悩むスタッフの多くが休業手当を受け取っていないという、厳しい現実も多く報告されています。
シフトカットは不当なのか
新型コロナ禍のような事態の中では、企業はシフトカットなしで雇用を守ることが求められる反面、従業者に配慮しすぎて企業経営が立ちいかなくなるリスクがあります。
企業側に求められるのは「なぜシフトカットが必要で、なぜ対象となるスタッフがあなたなのか」という点を、丁寧に説明することです。
この点を無視してシフトカットを断行すると、スタッフとの信頼関係の悪化を招いてしまうかもしれませんし、一部のスタッフが法的措置をとる可能性も否定できません。
また、休業手当を迅速に給付するなど、従業員の心情を考慮した対応が求められるでしょう。新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金のように、時短営業者・シフト日数減少者が申請できるものもあるので、人事担当者は、情報提供や手続きのサポートなどを行うことも大切です。
シフトカットにともなう休業手当の解釈にも注意
会社都合で実施されるシフトカットにともない、労働者が労働条件通知書・雇用契約書で指定した勤務日数を下回るなら、休業手当の支払い対象となる場合があります。
仮に、従業員側の事情を勘案してシフトカットを提案したとしても、従業員が納得していなければトラブルに発展するかもしれません。法的には、労働基準法と民法で休業手当額の上限額の解釈にも違いが見られるため、この点もトラブル発生の火種となります。
労働基準法26条では平均賃金の60%ですが、民法536条では100%以上の賃金の支払いが命じられています。
民法に関しては罰則がないため、多くの企業が労働基準法の60%を上限としていますが、100%の支払いを行う企業も少なからず存在しています。
いずれを採用するにしても、企業側が休業手当の方針を定めることで、優秀なスタッフが団結して職場を離れることのないよう、丁寧な対応が求められます。
休業手当に関して、詳しくこちらの記事をご覧ください。
そのシフトカットは大丈夫?決断する前に知っておきたいポイント
企業の立場から見れば、シフトカットは苦肉の策ではあるものの、実施すれば従業員に多大な影響を与える点は無視できません。
中途半端な判断でしてしまうと、従業員の信頼を失い、法律違反を指摘された際は、社会的制裁を受ける可能性があります。
そこで、実際にシフトカットを決断する前に注意したいポイントについて、主だったものをいくつかご紹介します。
自粛要請や客足減による休業は、「会社都合の休業」にあてはまる?
厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」によると、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は休業期間中の休業手当を支払わなければなりません。
問題は「どこまでが使用者の責と判断されるのか」ですが、例えば以下のようなケースが該当します。
- 自宅勤務などが可能な場合において、使用者が休業回避に向けて最善の努力を尽くしていない
- 感染の疑いが晴れて職務の継続が可能なスタッフを、使用者の自主的判断で休養させる
- 発熱などの症状のみを原因として、使用者の自主的な判断でスタッフを休業させる
また、新型コロナ禍にともなう事業縮小・自粛要請・客足減にともなう休業は、会社都合には当てはまるかどうか、ケースバイケースでの判断となります。
具体的には、
- 当該取引先への依存の程度
- 他の代替手段の可能性
- 事業休止からの期間
- 使用者としての休業回避のための具体的努力
これらを総合的に判断する必要があるというのが、厚生労働省の見解です。
店を閉めなければ国・地方公共団体から罰金が発生するような場合は、会社都合とは言い難い状況ですが、要請やお願いのレベルであれば会社都合とされる可能性が高く、そのためにやむなく営業を続けている店舗も少なくありません。
実質的に、自粛要請や客足減による休業は、会社都合扱いされる可能性があると考えておいた方が賢明でしょう。
シフトを決める前の段階でシフトに入れなければ「休業」にならない?
店舗のシフト管理がタイトな場合、シフトの決定がギリギリになるケースもあるでしょう。
そのような場面で管理職が思いつくシフトカットの方法として、シフトを決める前の段階で、特定のスタッフをシフトに含めない方法があげられます。
こういった判断は、必ずしも悪意があって行われるとは限りませんが、働く側からするとその分だけ収入が減らされてしまうことに変わりはないため、従業員にとっては損失となります。
結果的に、スタッフとの雇用契約上の勤務日数よりも実際のシフトの日数が少なければ、会社都合と判断されてしまうおそれがあります。
退職してもらう場合は手続きを慎重に行うこと
シフトカットにともない、スタッフに退職したいと相談された場合、一律でスタッフの自己都合退職とするのは避けたいところです。
特に、以下の2つの条件に該当するスタッフの退職手続きは、失業給付のスタート時期にも関わってくるため慎重に進めましょう。
- 労働基準に具体的な就労日数等の定めがある場合
- シフトの減少により週労働時間が20時間を下回る場合
あらかじめ労働条件として具体的な就労日数が定められているのに、契約更新時にシフトを減らす形で労働条件を提示された場合、そのスタッフは「特定理由離職者」または「特定受給資格者」として認められる可能性があります。
また、令和3年3月31日以降に、新型コロナウイルスの影響によりシフトが減少し、概ね1か月以上の期間にわたり労働時間が週20時間を下回った・あるいは下回ることが明らかになって離職したスタッフは、「特定理由離職者」として扱われ、給付制限を受けません。
スタッフが退職手当をスムーズにもらえるよう対応することで、その後の企業に対するイメージダウンを間接的に防ぐことにつながります。
対応を怠ったことがなんらかの形で世間に広まってしまうと、その後の企業イメージが大幅にダウンしてしまうかもしれません。
口頭でのやり取りをすべて録音されていたら、最悪の場合は裁判沙汰になったり、SNSで拡散されてしまったりするおそれもあります。
退職手続きを進める際は、退職者の今後を考えた対応が望ましいでしょう。
シフトカット問題を逆手にとった戦略もある
残念ながら、学生など立場の弱い人の事情に付け込んで、意図的にシフトカットを行う企業も少なくありません。
一方で、シフトカット問題に対するスタンスを、自社の強みに置き換えている企業もあります。
一例として、英語塾の「トリプレット・イングリッシュスクール」では、アルバイト求人につき「シフトカットなし」を売りにして人材確保を行っています。
企業努力によってシフトカットのリスクを減らし、優秀な人材を維持している好例と言えるでしょう。
目先のことを考えてシフトカットを行うのか。
未来に備えてシフトカットという選択肢を手放すのか。
ウィズコロナ時代を見据えた企業の方針が問われます。
パート・アルバイトスタッフをレギュラーメンバーだけに絞らない選択肢
ここまでお伝えしてきたシフトカットにともなう諸々の問題は、一言でまとめると、固定シフトで働くパート・アルバイトの働き手にこだわってシフトを組む状況に一因があると言えます。
そこで、新しい採用方法の一つとしておすすめしたいのが、単日アルバイトのスポット採用です。
単日アルバイトのスポット採用という選択肢
固定スタッフのスケジュールはかんたんに変更できません。
しかし、必要なタイミングで働けそうな人材をスポット採用で確保できれば、固定スタッフのスケジュールをベースに、イレギュラーが発生しても柔軟な対応が可能です。
1日単位でシフトを埋められるメリットは、シフト管理者にとって非常に大きなものになるでしょう。
派遣や隙間バイトの活用で生じるデメリットはあるのか?
単日雇用における他の方法として、派遣社員・隙間バイトを活用する方法もあります。
これらの方法は、確かに当座の人員確保にはつながるものの、必要とする能力を安定して確保できるとは限りません。
日によって異なる業務レベルの人材が現場入りする可能性があるため、シフト管理者も他の勤務者も不安が拭えません。
店舗側・企業側それぞれがシフト投入前に実力を把握できない点は、派遣社員・隙間バイトの活用におけるデメリットと言えます。
matchboxがシフト調整の面で有利な点とは?
matchboxの最大の特徴は、現役のスタッフも、OBOGも、他店舗の従業員も単発アルバイトも、全員を「自社のパートナー」として登録し、情報を管理することが可能な点です。
シフトに入っているメンバー全体のレベルが低めと感じたら、OB・OGの中で経験豊富な人材を配置できる。
急な事情で人数の絶対数が少なくなりそうなら、すぐに入ってもらえるメンバーを採用することができる。
他店舗の応援要員を、都度調整することなく、店舗近郊で暮らしているメンバーの中からスムーズに選べる。
自社の店舗で働いてくれるパートナーの情報を一括管理できるからこそ、柔軟な対応が実現できるのです。
少子高齢化・アフターコロナに対応すべく、繁閑に合わせた人員調整は必須
少子高齢化・アフターコロナを迎え、働き方が多様化する中で、既存の採用方法を踏襲するだけでは結果につながりません。
転職市場が活況となり、終身雇用という考え方そのものが変容を迫られている中で、今後のパート・アルバイト人材の採用は、よりスピーディーに進むものと予想されます。
企業・従業員ともに、負担の少ない雇用・勤務形態を望む傾向が強まっているため、多様な働き方を実現できる体制の構築は、お互いにとって大きなメリットとなるはずです。
シフトカットによって企業価値を下げるような事態に陥る前に、ぜひ一度、matchboxの導入をご検討ください。
まとめ
シフトカットそのものは、適切に行えば違法とは言い切れないものの、企業には「対象者の休業補償」・「退職後の失業給付」に配慮した対応が求められます。
採用活動における負担軽減・シフトカットに頼らない企業戦略が、安定したシフト構築につながることでしょう。